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第244話

「また携帯が鳴っているけど、出ない?」

その言葉に、瑛介は唇を引き締め、「今はあなたの手にあるから」と答えた。

何の意味だろう?

もしかして、電話に出るかどうかを自分に任せるということなのだろうか?

最初、弥生は無視するつもりでいた。決めるのは私だと言われても、彼女が情に流されるとでも思っているのか?

しかし、ポケットの中でずっと携帯が震え続けると、次第にうるさく感じてきた。

弥生は思い切って瑛介を見つめ、「もし私が携帯の電源をオフにして、後で何か見逃したとしても、大丈夫?」と尋ねた。

瑛介はじっと彼女の顔を見つめ、「小さい頃から今まで、あなたを責めたことなんてあったか?」と答えた。

その言葉に、弥生は思わず動きを止めた。

「いいわ、それはあなたが言ったことだから、携帯の電源をオフにするね。うるさいから」

そう言って、弥生は彼の携帯をポケットから取り出した。ちょうどその時、画面は静かになっていて、奈々から四、五回も電話がかかってきていたことがわかった。

このタイミングで電話をしてくるなんて......

彼女は、奈々が瑛介に祖母の手術について聞きたかったのだろうと考えた。

そう思っていると、携帯が再び震えた。

今回は電話ではなく、メッセージが届いたのだ。そして、その内容がちょうど目に入った。

「瀬玲です。何度も電話をかけましたが出ませんでした。もしかして何か事情があったのでしょうか?しかし、非常に緊急なことがあります。奈々が病院を抜け出しました。怪我をしているのにどこに行ったか分からず、彼女の携帯も病室に残してあります。どうか彼女を探していただけないでしょうか?」

長いメッセージだったが、弥生はすぐに内容を読み終えた。

奈々がいなくなった?

こんな重要な時に??

どうして彼女が消えるんだろう?

弥生は思わず眉をひそめ、瑛介の方を見た。

瑛介は今、手術室の方を見つめており、彼女の様子には気づいていない。

もし......

もし彼女がこのメッセージを見なかったことにして、携帯の電源をオフにしてしまえば、後で瑛介に聞かれても「見ていなかった」と言えば済むことではないか。

さらに、彼女がこのメッセージを見ても、瑛介には何もできないだろう。彼自身が「携帯は私に任せる」と言ったのだから。

それに、奈々も大人だから。怪我をしていると
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